なぜ強豪クラブは「脳」を鍛えるのか?NeuroTracker・空間認知トレーニング・サッカーIQの科学

Jリーグや研究機関が選手の「認知」に注目し始めています。NeuroTracker等の空間認知トレーニングは本当に効果があるのか、査読論文と批判的レビューの両方から検証しました記事のサムネイル。
💡この記事のポイント
  • 徳島ヴォルティスは2023年、選手の「認知」を可視化するテストをアジアで初めて導入した
  • NTTの研究チームは、トップアスリートの脳と身体の働きを、競技中のリアルな状態のまま計測する研究を続けている
  • 「空間認知トレーニング」の代表格であるNeuroTrackerは、一部の研究で好成績が報告される一方、2021年の批判的レビューでは「実際の競技パフォーマンスへの効果を裏付ける証拠は乏しい」と指摘されている

かつてサッカー選手の評価といえば、走力・筋力・技術といったフィジカル面が中心でした。

しかし近年、Jリーグのクラブや国内の研究機関が、選手の「認知(判断・空間把握・注意力など、脳の情報処理能力)」そのものを可視化し、鍛えようとする動きを見せています。

「空間認知トレーニング」や「NeuroTracker」といったキーワードで検索すると、”脳を鍛えれば試合で勝てる”という景気の良い謳い文句がたくさん見つかります。

ただし、この分野は近年、査読論文の世界で活発な検証と反論が交わされている、なかなかスリリングな領域でもあります。

この記事では、実際の導入事例と、効果を検証した研究の両方を、できる限りフラットにご紹介します。


目次

徳島ヴォルティスが導入した「認知の可視化」│NeurOlympicsとは

Jリーグの徳島ヴォルティスは2023年10月、オランダのBrainsFirst BV社が開発した認知診断テスト「NeurOlympics」の導入を発表しました。

同社にとってアジア初の契約だったとされています。

このテストは、ゲーム形式で「認知→判断→実行」というプロセスに関わる脳の情報処理を測定するもので、記憶力や反射神経、反応速度などを評価します。主にユース世代を対象に、U-13選手やトップチームの若手選手から実施が始まりました。

導入の狙いについて、同クラブの強化本部長は、従来のフィジカルデータだけでは選手の将来性を十分に予測できない点に着目したと説明しています。

「目には見えない部分、認知の部分にそのヒントが隠されているのではないか」という問題意識のもと、シャビや久保建英のような選手を例に挙げながら、「現代サッカーはよりインテリジェンスが求められるようになっている」という考えを示しています。

なお、NeurOlympicsはあくまで選手の認知特性を”測定・可視化”するためのテストであり、それ自体がトレーニングツールというわけではない点には注意が必要です。

Jリーグの徳島ヴォルティスは2023年10月、オランダのBrainsFirst BV社が開発した認知診断テスト「NeurOlympics」の導入を発表した内容をまとめた画像。

📚 出典:徳島新聞「ヴォルティス、認知診断テスト導入 ユース世代の『サッカーIQ』測定 若手成長促進へ活用」/ footballista「徳島ヴォルティスが取り組む『認知の可視化』。岡田強化本部長が明かす『NeurOlympics』導入の狙い」


NTTの研究室が挑む「トップアスリートの脳」

もう一つ、国内で注目したい取り組みが、NTTコミュニケーション科学基礎研究所の柏野牧夫氏が率いる「柏野多様脳特別研究室」です。

この研究チームの特徴

選手を実験室に連れてきて特定の認知機能だけを切り出して測るのではなく、脳波・心拍・視線の動き・ホルモンなど複数の生体信号を、実際の競技に近い状況で計測しようとしている点にあります。

たとえば、野球のバッティングで一流選手がどのように視覚情報を処理して全身の動きに変換しているのか、競技中にいわゆる「ゾーン」状態に入るとき脳では何が起きているのか、といったテーマが研究対象になっています。

モータースポーツの研究では、まばたきのパターンに驚くほどの規則性があり、それが集中度やリスクの取り方と関係している可能性も報告されています。

特定の認知機能(記憶力・空間認知力・注意力など)を単純に切り分けて評価するというより、脳と身体の働き全体を、実際のパフォーマンスの文脈の中で捉えようとする研究アプローチだと言えます。

📚 出典:NTT R&D Website「トップアスリートの脳と身体のメカニズムを解明し、選手のパフォーマンス向上、ひいては人のWell-beingに貢献」/ 日本学術会議スポーツ・健康科学分科会資料「アスリートの脳を解明し鍛える」(柏野牧夫)


「空間認知トレーニング」の代表格、NeuroTrackerとその研究の”現在地”

「空間認知トレーニング」という言葉とセットでよく登場するのが、カナダの研究者ジョスラン・フォーベール氏が開発した「NeuroTracker」です。

画面上で複数の球体が同時に動く中から、指定された球体だけを視線を動かさずに追い続ける「3D-MOT(3次元マルチプルオブジェクトトラッキング)」という課題を繰り返すことで、注意力や空間把握能力を鍛えるとされるトレーニングツールで、世界中のスポーツチームや研究機関で活用されています。

2016年に発表されたある研究では、大学レベルのサッカー選手23名を対象に、NeuroTrackerによる3D-MOTトレーニングを10回実施したグループと、そうでない対照グループを比較したところ、トレーニンググループは実際の試合形式のテストで、パスの判断精度が対照グループよりおよそ15%高いという結果が報告されました(ドリブルやシュートの精度には、有意な差は見られませんでした)。

これは、実験室的なトレーニングが実際の競技パフォーマンスに”転移”したことを示す、当時としては珍しい報告として注目されました。

ただし、この分野の研究を専門家が検証し直すと、話はそう単純ではないことがわかってきます。

2021年に発表された批判的な系統的レビューでは、NeuroTrackerに関するこれまでの研究を精査した結果、「実際の競技場面のような、生態学的妥当性の高い課題への転移効果を検証した研究はわずか3件しかなく、そのうち2件では効果が確認できなかった」と指摘されています。

先ほどご紹介したサッカーのパス精度に関する研究についても、「重要な方法論上の限界があり、追試が必要」と評価されました。さらにこのレビューは、事前登録(研究計画の公表)が行われていない研究が多いこと、被験者数が少ないグループが多いことなど、複数の方法論上の課題を指摘し、「NeuroTrackerが実際にワーキングメモリや持続的注意力といった、謳われている認知機能そのものを鍛えているのかどうかさえ、疑問の余地がある」と、かなり踏み込んだ形で慎重な見方を示しています。

そして2024年には、まさにこの”追試が必要”と指摘されていたサッカーのパス精度に関する研究を、あらためて検証し直した追跡研究が発表されました。

結果は、NeuroTrackerによる3D-MOTトレーニングが実際の試合パフォーマンスに転移するという効果は確認できなかった、というものでした。

一つの研究が話題を呼び、その後の専門家による検証を経て、当初考えられていたほど確実な効果ではなかったと判明していく——

この構図は、他分野の心理学研究でもしばしば見られるものです。

NeuroTrackerのようなツールが無意味だと断じることはできませんが、「導入すれば試合の成績が上がる」と単純に言い切れる段階には、まだないというのが、現時点で誠実な整理だと言えるのではないでしょうか。

▽ 分かりやすく要約 ▽

「空間認知トレーニング」は試合で活きるか?
※アニメーションはイメージです
📚 出典
Romeas, T., Guldner, A., & Faubert, J. (2016). 3D-Multiple Object Tracking Training Task Improves Passing Decision-Making Accuracy in Soccer Players. Psychology of Sport and Exercise, 22, 1-9/ Vater, C., Gray, R., & Holcombe, A.O. (2021). A Critical Systematic Review of the Neurotracker Perceptual-Cognitive Training Tool. Psychonomic Bulletin & Review, 28, 1458-1483/ “No Transfer of 3D-Multiple Object Tracking Training on Game Performance in Soccer: A Follow-up Study.” Psychology of Sport and Exercise (2024)

なぜ、スポーツの世界で「認知」が注目されるようになったのか

NeuroTrackerのような特定のトレーニングツール単体の効果には、まだ慎重な検証が必要な段階だとしても、「一流選手の判断力・空間把握力は、フィジカルだけでなく脳の情報処理能力とも関わっている」という大きな方向性自体は、スポーツ科学の中で広く共有されている考え方です。

徳島ヴォルティスがNeurOlympicsで測ろうとしている「認知→判断→実行」のプロセスも、NTTの研究チームが競技中の脳と身体の状態を丸ごと捉えようとしているのも、根底には「優れたパフォーマンスは、筋力や瞬発力だけでは説明しきれない」という共通の問題意識があります。

特定のツール一つで劇的に成績が上がるという単純な話ではなく、記憶力・空間認知力・注意力といった脳の働きが、スポーツの現場でも真剣に研究され始めている、という大きな流れとして捉えるのが、現時点では実態に近いと言えそうです。

特定のツール一つで劇的に成績が上がるという単純な話ではなく、記憶力・空間認知力・注意力といった脳の働きが、スポーツの現場でも真剣に研究され始めている現時点では実態に近いイメージ画像。
画像はイメージ

日常生活でも関わる、”認知”という視点

ここまでご紹介してきた「記憶力」「空間認知力」「持続的注意力」といった脳の働きは、もちろんトップアスリートだけのものではありません。

とっさの判断、地図なしで道を把握する感覚、作業に集中し続ける力など、私たちの日常生活のさまざまな場面にも関わっています。

Memory Coffeeは、GABAを配合し、「記憶力」「空間認知力」「持続的注意力」の機能性表示を消費者庁に届け出ている(届出番号:J1384)インスタントコーヒーです。

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Memory Coffeeで使用しているGABAは、加齢とともに低下する認知機能の一部を維持する機能が報告されています。

✓
記憶力 見たり聞いたりしたことを思い出す力
✓
空間認知力 物の位置、形、向きなどを正確に把握する力
✓
持続的注意力 注意を持続させながら、作業を続ける力

なお、本記事でご紹介した徳島ヴォルティスの取り組みやNeuroTrackerに関する研究は、あくまでアスリートの認知トレーニングを対象にした知見であり、Memory Coffeeの効果を直接裏付けるものではありませんが、スポーツ科学の世界で”認知”への関心が高まっているのと同じように、日常生活の中でも、こうした脳の働きに目を向ける習慣を持ってみるのはいかがでしょうか。

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まとめ

徳島ヴォルティスのNeurOlympics導入や、NTTによるトップアスリートの脳研究は、「フィジカルだけでなく、認知そのものを見える化しよう」というスポーツ界の新しい潮流を象徴する取り組みです。

一方で、NeuroTrackerのような具体的なトレーニングツールの効果については、2021年の批判的レビューや2024年の追跡研究が示すように、まだ確立した結論には至っていません。

話題性の高いトピックほど、”導入事例”と”効果検証の現在地”の両方を押さえておくことが、情報を正しく理解する上で欠かせないと言えるでしょう。


よくある質問(FAQ)

NeuroTrackerを使えば、サッカーが上手くなりますか?

断定はできません。2016年の研究ではパスの判断精度向上が報告されましたが、2021年の批判的レビューではこの分野の研究全体に方法論上の課題があると指摘され、2024年の追跡研究では、同種のトレーニングが試合パフォーマンスに転移するという効果は確認されませんでした。現時点では、効果を確立した結論として断言できる段階ではありません。

徳島ヴォルティスのNeurOlympicsは、選手を鍛えるトレーニングツールですか?

いいえ。NeurOlympicsは選手の認知特性を測定・可視化するためのテストであり、それ自体が能力を向上させるトレーニングツールではありません。

Memory Coffeeを飲めば、NeuroTrackerのようなトレーニングと同じ効果がありますか?

いいえ、そのような効果は謳っておりません。本記事で紹介したスポーツ選手向けの認知トレーニングに関する研究と、Memory Coffeeの機能性表示(記憶力・空間認知力・持続的注意力)は、それぞれ別の研究・評価にもとづくものです。Memory Coffeeの届出内容の詳細については、商品ページをご確認ください。



免責事項および重要事項
  1. 情報の正確性について:
    本記事の内容は、執筆時点で確認できた報道・査読論文に基づき作成しています。スポーツ科学・認知科学の研究は現在も検証が進められており、今後新たな知見により内容が更新される可能性があります。
  2. 効果の適用範囲について:
    本記事で紹介したNeuroTracker等のトレーニングに関する研究結果は、特定の実験条件下で確認されたもの、または効果が確認されなかったものであり、あらゆる状況・個人に同程度で当てはまることを示すものではありません。
  3. 医療行為の代替ではありません:
    本記事は一般的なスポーツ科学・脳科学情報の提供を目的としたものであり、医師による診断、治療、または助言に代わるものではありません。また、紹介している成分や製品は、疾病の診断、治療、予防を目的としたものではありません
    。
  4. 効果の個人差について:
    GABA等の機能性関与成分に関する記述は、一般的な届出情報・研究知見に基づくものであり、特定の製品の摂取によって全ての方に同様の効果を保証するものではありません。体質や体調により、まれに合わない場合があります。
  5. 損害への責任:
    本記事の情報を利用したことによって生じたいかなる損害についても、当サイトおよび運営者は一切の責任を負いかねます。最終的な判断はご自身の責任において行っていただけますよう、お願い申し上げます。

【機能性表示食品に関する表示】

  • 本品は、事業者の責任において特定の保健の目的が期待できる旨を表示するものとして、消費者庁長官に届出されたものです。ただし、特定保健用食品と異なり、消費者庁長官による個別審査を受けたものではありません。
  • 本品は、疾病の診断、治療、予防を目的としたものではありません。
  • 食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。

Memory Coffee 編集部
著者
メモコーマガジン編集部

「コーヒーのひとときに、知的な潤いを」テーマに、国内外の最新論文や公的機関による科学的データに基づいた脳の健康情報を発信!
機能性表示食品の届出に用いられたエビデンスを軸に、客観的で正確な情報提供に努めています。

運営会社・製品開発元情報

会社名 株式会社HOPEF
所在地 〒957-0105 新潟県北蒲原郡聖籠町大字次第浜1948
代表者 佐藤 俊彦
お問い合わせ https://memory-coffee.jp/contact/
事業内容
  • コーヒー及び紅茶の輸入、製造、加工及び販売
  • 加工食品、健康食品、機能性表示食品等の企画、製造及び販売
  • バイオマス発電所での使用を目的とする燃料に関する製造、調査及び研究
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