- 「舌先現象」という現象に、なぜ正式な名前がついているのか
- 思い出せないのに「頭文字」や「音節数」だけは分かる不思議
- なぜ「意味」は分かっているのに「音」が出てこないのか、その仕組み
- 年齢を重ねると増えるのは本当か、注意すべき境界線
- 舌先現象から早く抜け出すための、研究にもとづくコツ
「あれ、なんて名前だったっけ……喉まで出かかっているのに」——
知っているはずの言葉や人の名前が、どうしても出てこない。
そんなもどかしい経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。
実はこの現象には「舌先現象」という正式な名前がついており、心理学の世界では60年近く前から研究が続けられています。
この記事では、舌先現象とは何か、なぜ「分かっているのに出てこない」というもどかしい状態が起こるのか、そして年齢を重ねると増えるのは本当なのかを、心理学の研究にもとづいて解説します。
「舌先現象」とは?│なぜ名前までついているのか
言葉がのど元まで出かかっているのに、最後の一歩が出てこない——
この状態は英語で「Tip of the Tongue(舌の先)」と呼ばれ、日本語では「舌先現象」と訳されています。
この現象を初めて実験的に研究したのは、アメリカの心理学者ロジャー・ブラウン氏とデイヴィッド・マクニール氏です。二人は1966年に発表した論文の中で、あまり日常的には使われない単語の「意味の説明」を読み上げ、その単語を答えてもらうという実験を行いました。
この方法によって、参加者に人為的に舌先現象の状態を作り出すことに成功したのです。
この研究以降、舌先現象は単なる日常の”あるある”ではなく、記憶の仕組みを解き明かすための重要な研究対象として扱われるようになりました。
思い出せないのに「頭文字」や「音節数」だけは分かる不思議
ブラウンとマクニールの実験で特に興味深いのは、参加者が単語を完全に思い出せない状態でも、その単語についてかなり具体的な情報を答えられたという結果です。
具体的には、参加者は目当ての単語を思い出せていないにもかかわらず、「頭文字が何か」「音節がいくつあるか」「どこにアクセントがあるか」「似た音の単語」といった情報を、ある程度正確に答えることができました。
しかも、実際に単語を思い出す瞬間が近づくほど、これらの情報の正確さは増していったといいます。
研究チームはこの、単語そのものは思い出せないのに部分的な情報だけは分かっている状態を「ジェネリック・リコール(generic recall)」と名付けました。
つまり舌先現象とは、記憶が完全に消えてしまった状態ではなく、記憶の中にある情報の一部にはアクセスできているのに、単語全体を完全な形で引き出すことだけができていないという、非常に特殊な”中間状態”だと言えます。
▽ 分かりやすく要約 ▽
Brown, R., & McNeill, D. (1966). The “tip of the tongue” phenomenon. Journal of verbal learning and verbal behavior, 5(4), 325-337.
なぜ起こる?記憶の中で「意味」と「音」がすれ違うとき
では、なぜこのような中途半端な状態が起こるのでしょうか。
この仕組みを説明する考え方として広く知られているのが、心理学者デボラ・バーク氏とドナルド・マッケイ氏らが提唱した「伝達欠損モデル(transmission-deficit model)」です。
このモデルによれば、私たちが言葉を思い出すとき、脳の中では「意味のネットワーク」と「音(発音)のネットワーク」が別々の階層として存在し、意味の情報から音の情報へと”活性化”が伝達されることで、初めて言葉として発音できる状態になります。
舌先現象は、意味のレベルでは目当ての単語が正しく活性化されている(だから「分かっている」という感覚がある)のに、そこから音のレベルへの活性化の伝達がうまくいかない(だから発音できない)ときに起こると考えられています。
バーク氏らは、この伝達がうまくいかなくなる要因として、その単語を「普段どれくらいの頻度で使っているか」「最近使ったのはいつか」、そして「加齢」の3つを挙げています。
使用頻度が低く、しばらく使っていない単語ほど、意味から音への伝達経路が弱くなり、舌先現象が起こりやすくなるというわけです。
なお、これとは別に、似た意味を持つ別の単語が先に思い浮かんでしまい、それが目当ての単語の想起を邪魔してしまうという「ブロッキング仮説」も提唱されています。
どちらか一方が完全に正しいというより、複数の要因が組み合わさって起こる現象だと考えられています。
▽ 分かりやすく要約 ▽
Burke, D. M., MacKay, D. G., Worthley, J. S., & Wade, E. (1991). On the tip of the tongue: What causes word finding failures in young and older adults? Journal of memory and language, 30(5), 542-579.
年齢を重ねると増えるのは本当か?
「最近、舌先現象が増えた気がする」と感じている方もいるかもしれません。
これは思い込みではなく、実際に心理学の研究でも確認されている傾向です。
バーク氏らの研究では、高齢の成人は若年の成人と比べて、舌先現象をより頻繁に経験し、思い出せる周辺情報(似た音の単語など)も少ない傾向にあることが報告されています。
先ほど紹介した「伝達欠損モデル」に沿って考えると、加齢にともなって意味から音への伝達経路がやや弱くなりやすいことが、一因として関係していると考えられます。
ここで大切なのは、舌先現象が増えること自体は、健康な人にも広く見られる、加齢にともなう自然な変化の一つとして研究されているという点です。
特定の単語が一時的に出てこないという舌先現象と、日常生活に支障をきたすような記憶の障害とは、研究上も区別される別のものです。
物忘れの増加について気になることがあれば、自己判断せず、医療機関にご相談いただくことをおすすめします。

舌先現象から早く抜け出すための、研究にもとづくコツ
舌先現象そのものを完全に防ぐことは難しいものの、研究から見えてきたヒントもあります。
一つは、無理に「近い単語」を思い浮かべ続けないことです。
先述の「ブロッキング仮説」の考え方に沿えば、不正解の単語にこだわり続けることが、かえって正解の想起を妨げてしまう可能性があります。
一度その単語から意識を離し、しばらく経ってから思い出そうとするほうが、うまくいくことがあるとされています。
もう一つは、頭文字を一つずつ順番に当てはめて発音してみることです。
ブラウンとマクニールの実験結果が示すように、舌先現象の状態でも頭文字の情報にはある程度アクセスできていることが多いため、これが記憶を引き出す手がかりになることがあります。
「ブロッキング仮説」に基づく意識の切り替えと、「ジェネリック・リコール」を活用した頭文字検索の応用。
自分の記憶力を大切にするために
舌先現象の正体が「意味は分かっているのに、音への伝達だけがうまくいかない一時的な状態」だとすれば、これは記憶がなくなったことの証拠ではなく、むしろ膨大な言葉の情報が、ふだん脳の中にきちんと蓄積されていることの裏返しだとも言えそうです。
こうした記憶の仕組みを知ったうえで、日々の記憶力や言葉の想起力とどう向き合っていくかを考えることには、大きな意味があるのではないでしょうか。
Memory Coffeeは、GABAを配合し、「記憶力」「空間認知力」「持続的注意力」の機能性表示を消費者庁に届け出ている(届出番号:J1384)インスタントコーヒーです。
Memory Coffeeで使用しているGABAは、加齢とともに低下する認知機能の一部を維持する機能が報告されています。
毎日の生活の中で、自分の認知機能と向き合うための選択肢の一つとして役立てていただければと思います。
【コーヒー×GABA】ながらケアできる「Memory Coffee」
で見る ▶
まとめ
舌先現象は、記憶が失われた状態ではなく、「意味」の記憶は正しく活性化されているのに、そこから「音」への伝達が一時的にうまくいかない、記憶の中間状態です。
1966年のブラウンとマクニールの実験以来、心理学の重要な研究テーマとして扱われてきました。
加齢にともなって増える傾向があることも分かっていますが、それ自体は健康な人にも起こる自然な現象です。
もどかしい感覚の正体を知ることは、自分自身の記憶との付き合い方を見つめ直す、良いきっかけになるかもしれません。

なお、記憶にまつわる別の身近な現象として、記憶の物理的な正体に迫る「エングラム」研究や、初めての体験なのに「前にも見た気がする」と感じる「デジャヴ(既視感)」もあります。あわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
- 舌先現象と「度忘れ」は同じものですか?
-
日常会話ではほぼ同じ意味で使われますが、舌先現象は「頭文字や音節数など、部分的な情報にはアクセスできている」という特徴的な状態を指す、心理学における専門的な呼び方です。
- 外国語を勉強していると舌先現象が起きやすくなりますか?
-
複数の言語を扱う人は、単一の言語を話す人と比べて、母語以外の言葉で舌先現象を経験しやすい傾向があると報告されています。使用頻度が相対的に低くなりやすいことが関係していると考えられます。
- 舌先現象が増えるのは認知症のサインですか?
-
舌先現象そのものは、健康な人にも広く見られる自然な現象であり、加齢にともなって増える傾向があることも研究で確認されています。舌先現象の頻度の変化だけで判断できるものではありませんので、日常生活に支障が出るような物忘れが気になる場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。
- 情報の正確性について:
本記事の内容は、執筆時点で確認できた学術論文・公的資料等に基づき作成しています。正確性の確保に努めていますが、新たな研究知見や検証により、内容が更新される可能性があります。 - 紹介した現象の対象について:
本記事で扱う舌先現象は、健康な人にも広く見られる一時的な記憶現象です。加齢にともなう変化としての側面を紹介していますが、認知症等の疾患の診断や説明を目的とした医学的な情報ではありません。 - 医療行為の代替ではありません:
本記事は一般的な心理学・脳科学情報の提供を目的としたものであり、医師・臨床心理士等の専門家による診断、治療、または助言に代わるものではありません。また、紹介している成分や製品は、疾病の診断、治療、予防を目的としたものではありません。 - 効果の個人差について:
GABA等の機能性関与成分に関する記述は、一般的な届出情報・研究知見に基づくものであり、特定の製品の摂取によって全ての方に同様の効果を保証するものではありません。体質や体調により、まれに合わない場合があります。 - 損害への責任:
本記事の情報を利用したことによって生じたいかなる損害についても、当サイトおよび運営者は一切の責任を負いかねます。最終的な判断はご自身の責任において行っていただけますよう、お願い申し上げます。
【機能性表示食品に関する表示】
- 本品は、事業者の責任において特定の保健の目的が期待できる旨を表示するものとして、消費者庁長官に届出されたものです。ただし、特定保健用食品と異なり、消費者庁長官による個別審査を受けたものではありません。
- 本品は、疾病の診断、治療、予防を目的としたものではありません。
- 食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。
運営会社・製品開発元情報
| 会社名 | 株式会社HOPEF |
|---|---|
| 所在地 | 〒957-0105 新潟県北蒲原郡聖籠町大字次第浜1948 |
| 代表者 | 佐藤 俊彦 |
| お問い合わせ | https://memory-coffee.jp/contact/ |
| 事業内容 |
|

