アダプトゲンとGABAの違いと共通点とは?│受容体レベルで見る親和性

「アダプトゲン」と「GABA」は何が違う?両者の定義の違いから、アシュワガンダや高麗人参に見つかったGABA受容体との接点まで、研究に基づき解説した記事のサムネイル。
💡この記事のポイント
  • 「アダプトゲン」は1947年、旧ソ連の学者ラザレフが提唱した”機能概念”で、単一の物質名ではない
  • GABAは個別に届出・評価される単一物質、アダプトゲンは複数の植物成分に共通する性質のカテゴリー名
  • アシュワガンダや高麗人参(ジンセノサイドRg3)には、GABA受容体に直接作用する研究報告がある
  • ロディオラのように、似た体感があってもGABA受容体とは別経路で働くと考えられる成分もある

「アダプトゲン」という言葉を、サプリメントやハーブティーのパッケージで見かける機会が増えました。

ストレスに強い体をつくる成分、というイメージで語られることが多いのですが、同じく”ストレスケア系”の成分として知られる「GABA」との関係がよくわからない、という声もよく聞きます。

アダプトゲンとGABAは、同じものなのでしょうか。それとも別物なのでしょうか。

結論から言うと、両者は本来「次元が違う」言葉です。ただし近年の研究では、一部のアダプトゲン成分がGABA受容体そのものに直接働きかけるという、受容体レベルでの意外な接点も見つかってきています。

この記事では、アダプトゲンの定義の歴史から、GABAとの共通点・相違点までを、査読研究に基づいて整理します。


目次

アダプトゲンとは何か│ストレス適応をめぐる80年近い歴史

「アダプトゲン」という概念を最初に提唱したのは、旧ソ連の毒性学者ニコライ・ラザレフです。

1947年、ラザレフは「生体が持つ非特異的な抵抗力(特定の脅威に限らず、さまざまなストレスに対する耐性)を高める物質」という意味でこの言葉を使い始めました。

この考え方を体系立てて発展させたのが、ラザレフに師事したイズライル・ブレフマンと、共同研究者のイズライル・ダーディモフです。

二人は1960年代にエゾウコギ(Eleutherococcus senticosus)などの研究を重ね、1969年の論文で「アダプトゲン」と呼べる物質が満たすべき3つの基準を提示しました。

摂取する生体にとって比較的無害であること、特定の刺激だけでなく物理的・化学的・生物学的なさまざまなストレス要因に対して非特異的に抵抗力を高める作用を持つこと、そしてストレスによって崩れた生体機能を、どちらの方向に傾いていたとしても正常な状態に近づける「正常化作用」を持つこと——の3つです。

つまりアダプトゲンとは、特定の化学物質の名前ではなく、こうした性質を満たす植物由来成分の総称・機能概念です。

アシュワガンダ、高麗人参、ロディオラ(紅景天)、エゾウコギなど、化学構造も由来もまったく異なる複数の植物成分が「アダプトゲン」というカテゴリーでまとめて語られているのは、このためです。

📚 出典:Brekhman, I.I., & Dardymov, I.V. (1969). New substances of plant origin which increase nonspecific resistance. Annual Review of Pharmacology, 9, 419-430.


GABAとアダプトゲンは、そもそも「次元が違う」言葉

ここでいったん整理しておきたいのが、「GABA」と「アダプトゲン」は、言葉としてのレイヤー(階層)がそもそも異なるという点です。

GABA(γ-アミノ酪酸)は、化学構造が明確に定まった単一のアミノ酸・神経伝達物質です。

日本では機能性表示食品制度のもとで、GABAという成分そのものについて、特定の機能(届出ごとに定められた範囲)を裏付ける科学的根拠を消費者庁に届け出るという、成分単位の厳格な手続きが存在します。

一方の「アダプトゲン」は、特定の物質名ではなく、前章で見た3つの基準を満たすとされる複数の植物成分に対して使われる”機能概念”のラベルです。

単一の化学物質ではないため、GABAのように「アダプトゲンという成分を◯mg配合」という形で機能性表示食品の届出を行うことはできません。

機能性表示食品制度は、あくまで個別の「機能性関与成分」ごとにエビデンスを評価する仕組みだからです。

実際、アダプトゲンという概念そのものの学術的な位置づけも、まだ確立されているとは言えません。

欧州医薬品庁(EMA)のハーブ医薬品委員会(HMPC)は2008年に公表した見解書の中で、「アダプトゲン」という用語について「EUで一般的に使用されている薬理学・臨床用語としては受け入れられていない」と明言し、この概念を医薬品のマーケティング表示の根拠とすることは「適切ではない」と結論づけています。

エゾウコギの根のような伝統的ハーブ製剤の評価においては参考にしうるとしつつも、さらなる研究の必要性を指摘するにとどめています。

つまり、GABAは個別成分として厳格な評価を受けた”届出済みの物質”であるのに対し、アダプトゲンはまだ薬理学の正式なカテゴリーとして確立されていない”研究途上の概念”である——これが両者の最も大きな違いです。

📚 出典:Committee on Herbal Medicinal Products (HMPC), European Medicines Agency. (2008). Reflection Paper on the Adaptogenic Concept. EMEA/HMPC/102655/2007.


受容体レベルで見えてきた”接点”│アシュワガンダの場合

言葉としては次元が違うアダプトゲンとGABAですが、近年の基礎研究では、一部のアダプトゲン成分がGABA受容体そのものに直接作用することを示すデータが報告されるようになってきました。

代表的なのが、代表的なアダプトゲンの一つであるアシュワガンダ(Withania somnifera)です。

2015年に発表された研究では、アシュワガンダの根の水抽出物を、GABA受容体を発現させた培養細胞に作用させる電気生理学的な実験が行われました。

その結果、抽出物はGABA-A受容体とGABA-ρ(ロー)受容体という、2種類のイオンチャネル型GABA受容体の両方を直接活性化させることが確認されています。

GABA-ρ受容体は、かつてGABA-C受容体とも呼ばれていた受容体で、ベンゾジアゼピン系薬剤に反応しないなど、古典的なGABA-A受容体とは薬理学的な性質が異なることが知られています。

特に興味深いのは、GABA-ρ受容体に対する感受性がGABA-A受容体の27倍も高かったという点です。

天然のGABAそのものに匹敵する強さでGABA-ρ受容体を活性化させた一方で、抽出物に含まれる代表的な成分として知られるウィザフェリンAやウィザノリドAを単体で試したところ、どちらも受容体を活性化させませんでした。

つまり、まだ特定されていない別の成分(群)がこのGABA様作用を担っていると考えられています。

研究チームは、この受容体レベルでの直接作用が、アシュワガンダが伝統的に不安の緩和や睡眠、筋肉の緊張緩和に用いられてきた経験的な効果を、分子レベルで説明しうる可能性があると考察しています。

📚 出典:Candelario, M., Cuellar, E., Reyes-Ruiz, J.M., Darabedian, N., Feimeng, Z., Miledi, R., Russo-Neustadt, A., & Limon, A. (2015). Direct evidence for GABAergic activity of Withania somnifera on mammalian ionotropic GABAA and GABAρ receptors. Journal of Ethnopharmacology, 171, 264-272.


高麗人参(ジンセノサイドRg3)にも見つかったGABA受容体との相互作用

GABA受容体との接点が報告されているのは、アシュワガンダだけではありません。

もう一つの代表的なアダプトゲンである高麗人参についても、その主要な薬効成分であるジンセノサイド(サポニンの一種)のRg3という成分が、GABA-A受容体に直接作用することが2013年の研究で示されています。

この研究では、Rg3をGABA-A受容体に作用させると、GABAが存在しない状態でも受容体を通じて電流が発生することが確認されました。

この作用には、GABA-A受容体を構成するサブユニットの一つであるγ2(ガンマ2)サブユニットとの相互作用が必要であることも明らかになっています。

さらにRg3は、GABAと一緒に作用させた場合にはGABAによる電流をさらに増強する働きも持っており、その結合部位はベンゾジアゼピン系薬剤が結合する部位とは別の場所であることも示されました。

つまりRg3は、GABAがなくても受容体を単独で活性化できる作用と、GABAの効果を後押しする作用という、2つの異なる仕組みでGABA-A受容体に関わっている可能性があるということです。

アシュワガンダの研究とあわせて見ると、「アダプトゲン」と呼ばれる複数の植物成分が、それぞれ異なる形でGABA受容体という共通のターゲットに接点を持っている、という構図が見えてきます。

📚 出典:Lee, B.H., Kim, H.J., Chung, L., & Nah, S.Y. (2013). Ginsenoside Rg3 regulates GABAA receptor channel activity: Involvement of interaction with the γ2 subunit. European Journal of Pharmacology, 705(1), 119-125.


一方で、GABA受容体を介さないアダプトゲンもある│ロディオラの例

ここまで見ると、「アダプトゲン=GABA受容体に作用する成分」という単純な図式を思い浮かべたくなりますが、実際はそう単純ではありません。

同じく代表的なアダプトゲンであるロディオラ(紅景天/Rhodiola rosea)を対象にした研究では、むしろ逆の結果が報告されています。

2013年に発表された動物実験では、ロディオラの根から抽出したアルコール抽出物をラットに投与したところ、高架式十字迷路試験や条件性情動反応試験といった複数の不安関連の行動試験で、用量に応じた抗不安様の作用が確認されました。

ところが、この抽出物がGABA-ベンゾジアゼピン受容体にどの程度結合するかを調べたところ、結合はごくわずかにとどまりました。

研究チームは、ロディオラの抗不安様作用は、GABA-A受容体・ベンゾジアゼピン結合部位を介した経路以外の、別の仕組みによって生じている可能性が高いと結論づけています。

つまり、同じ「アダプトゲン」というカテゴリーに含まれる成分であっても、GABA受容体への関わり方は一様ではないということです。

アシュワガンダや高麗人参のようにGABA受容体への直接作用が報告されている成分もあれば、ロディオラのように、似たような体感(落ち着き・リラックス感など)をもたらすとされていても、GABA受容体とは別の経路で働いていると考えられる成分もある。

「アダプトゲン」という言葉だけで、その作用機序まで一括りにはできない、という点は誤解しやすいポイントです。

📚 出典:Cayer, C., Ahmed, F., Filion, V., Saleem, A., Cuerrier, A., Allard, M., Rochefort, G., Merali, Z., & Arnason, J.T. (2013). Characterization of the anxiolytic activity of Nunavik Rhodiola rosea. Planta Medica, 79(15), 1385-1391.


つまり、アダプトゲンとGABAの関係をどう理解すればいいか

ここまでの内容を整理すると、アダプトゲンとGABAの関係は次のようにまとめられます。

まず大前提として、GABAは化学構造の定まった単一物質であり、日本では機能性関与成分として個別に届出・評価される対象です。

対してアダプトゲンは、特定の性質(低毒性・非特異的な抵抗力向上・正常化作用)を満たすとされる複数の植物成分をまとめた機能概念であり、薬理学上も規制上も、まだ正式なカテゴリーとして確立されたものではありません。

この点で、両者は本来、比較対象として同じ土俵に乗るものではないというのが出発点です。

そのうえで、個別の研究レベルでは接点も見つかっています。アシュワガンダやジンセノサイドRg3(高麗人参由来)のように、GABA-A受容体やGABA-ρ受容体に直接作用することが報告されているアダプトゲン成分がある一方、ロディオラのように、似た体感があっても別の経路で作用していると考えられる成分もあります。

「アダプトゲンだからGABAと同じように働く」というわけではなく、成分ごとに研究の蓄積状況も作用の仕組みも異なる、というのが現時点での実像です。


Memory CoffeeのGABAは、届出に基づくエビデンスを持つ成分です

ここで一つ、誤解のないように補足しておきたい点があります。

この記事で紹介したアシュワガンダやジンセノサイドRg3の受容体研究は、いずれもGABA受容体という”分子の仕組み”に関する基礎研究であり、不安の緩和や抗ストレス作用といった一般的な文脈で行われたものです。

これらは、記憶力・空間認知力・持続的注意力といった、Memory Coffeeが機能性表示食品として届け出ている機能とは異なる観点の研究であり、Memory Coffeeの効果を直接裏付けるものではありません。

Memory Coffeeに配合されているGABA(200mg)は、「アダプトゲン」という研究途上の概念とは異なり、記憶力・空間認知力・持続的注意力に関する科学的根拠を消費者庁に届け出た機能性表示食品(届出番号:J1384)の機能性関与成分です。

「なんとなく体に良さそうなアダプトゲン」ではなく、特定の機能について、特定の根拠に基づいて届け出られた成分である、という違いを知っておくことは、成分表示やサプリメントの謳い文句を正しく読み解くうえでも役立つはずです。


まとめ

アダプトゲンは、1947年にラザレフが提唱し、ブレフマンとダーディモフが1969年に基準を整理した”機能概念”であり、単一の化学物質を指す言葉ではありません。

GABAのような個別の成分とは、そもそも言葉としての階層が異なります。

ただし研究レベルでは、アシュワガンダやジンセノサイド(高麗人参)のように、GABA-A受容体・GABA-ρ受容体に直接作用することが報告されている成分もあり、受容体レベルでの意外な接点が見えてきています。

一方でロディオラのように、似た体感がありながらGABA受容体とは別の経路で働くと考えられる成分もあり、「アダプトゲン=GABA作用」と単純化することはできません。

GABAは日本の機能性表示食品制度のもとで、特定の機能について個別に評価・届出された成分です。

「アダプトゲン」という言葉の広がりとあわせて、成分ごとのエビデンスの中身を確認する視点を持つことが、情報を正しく読み解く第一歩になります。


よくある質問(FAQ)

アダプトゲンとGABAサプリは同じ効果が期待できますか?

いいえ、同じではありません。アダプトゲンは複数の植物成分に共通する機能概念であり、成分ごとに研究の蓄積や想定される作用機序が異なります。GABAは単一の物質として個別に機能性が評価されている成分であり、両者を同一視することはできません。

「アダプトゲン」は医薬品として認められているのですか?

現時点では、欧州医薬品庁(EMA)も「アダプトゲン」を正式な薬理学的カテゴリーとしては認めておらず、医薬品のマーケティング表示の根拠とすることも適切ではないとしています。日本の機能性表示食品制度でも、アダプトゲンという概念そのものを届出の根拠とすることはできません。

アシュワガンダを摂取すればGABAと同じ効果が得られますか?

アシュワガンダの抽出物がGABA受容体に直接作用するという基礎研究はありますが、これは主に抗不安・鎮静などの文脈で行われた研究です。Memory Coffeeが届け出ている記憶力・空間認知力・持続的注意力とは異なる観点の研究であり、同一の効果を保証するものではありません。

すべてのアダプトゲンがGABA受容体に作用するのですか?

いいえ。この記事で紹介したロディオラの研究のように、抗不安様の作用が報告されていても、GABA-ベンゾジアゼピン受容体への結合はごくわずかだったという例もあります。アダプトゲンという括りだけで、作用の仕組みまで一括りにはできません。



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【機能性表示食品に関する表示】

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Memory Coffee 編集部
著者
メモコーマガジン編集部

「コーヒーのひとときに、知的な潤いを」テーマに、国内外の最新論文や公的機関による科学的データに基づいた脳の健康情報を発信!
機能性表示食品の届出に用いられたエビデンスを軸に、客観的で正確な情報提供に努めています。

運営会社・製品開発元情報

会社名 株式会社HOPEF
所在地 〒957-0105 新潟県北蒲原郡聖籠町大字次第浜1948
代表者 佐藤 俊彦
お問い合わせ https://memory-coffee.jp/contact/
事業内容
  • コーヒー及び紅茶の輸入、製造、加工及び販売
  • 加工食品、健康食品、機能性表示食品等の企画、製造及び販売
  • バイオマス発電所での使用を目的とする燃料に関する製造、調査及び研究
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