- 認知症の親との会話で「一番優先すべきこと」
- 専門機関も推奨する「4つの具体的な接し方」
- 家族が悪気なくやってしまいがちな「NGな対応」
- 一人で抱え込まないための相談先と心の保ち方

親が認知症かもしれない。今まで通り話しかけていいのか分からない…

何を言っても否定されるのが怖いし、逆に傷つけてしまうのも怖い

優しくしたいのに、余裕がなくてつい冷たく接して自己嫌悪になる
親に認知症の診断がついた、あるいはその疑いがあると分かったとき、どのように会話をすればいいのか分からなくなる方は少なくありません。
戸惑いや不安を感じるのは、家族としてごく自然な反応です。
この記事では、厚生労働省や公益社団法人認知症の人と家族の会などが公開している情報をもとに、会話の前提として知っておきたいことと、具体的な接し方の工夫を紹介します。
会話の前に知っておきたいこと
具体的な話し方のテクニックを知る前に、まずは会話に対する「家族側の心構え」を少しだけ変えてみましょう。
以下の2つの前提を知っておくだけでも、心の負担はすっと軽くなります。
「治す」会話ではなく「安心してもらう」会話
認知症の親との会話では、正しい情報を伝えて理解させることよりも、本人が安心できる状態を保つことの方が大切だとされています。
国立長寿医療研究センターが公開している「認知症の方と関わるとき~大切な7つのポイント~」の中でも、症状そのものより本人の思いや好みに寄り添う姿勢が大切だと挙げられています。
事実を正確に伝えられたかどうかより、「穏やかな気持ちで会話が終わったかどうか」を基準にすると、力の入れ方が変わってきます。
大切な7つのポイント
時間帯によって現れ方が変わることもある
認知症の症状は、一日中同じように現れるとは限りません。
たとえば夕方になると落ち着かなくなり、「家に帰ります」と荷物をまとめようとする「夕暮れ症候群」と呼ばれる状態は、公益社団法人認知症の人と家族の会が示す「認知症をよく理解するための9大法則・1原則」などでもよく知られた例として解説されています。
昨日はうまく話せたのに今日はうまくいかない、という変化があっても、対応が悪かったからではなく、こうした症状の特性によることがあります。
9大法則・1原則
1. 記憶障害に関する法則
2. 症状の出現強度に関する法則
3. 自己有利の法則
4. まだら症状の法則
5. 感情残像の法則
6. こだわりの法則
7. 作用・反作用の法則
8. 症状の了解可能性に関する法則
9. 衰弱の進行に関する法則
【原則】介護に関する原則
話しかけるときに意識したいこと
相手が安心できる状態を保つためには、日々の声かけに少しの工夫を取り入れることが効果的です。
専門機関も推奨する4つの具体的な接し方を紹介します。
否定・訂正をしない(前提として)
事実と違うことを言われても、その場で強く訂正しないことが基本です。
前述の「認知症の人と家族の会」の資料でも、本人の思い込みをいったん受け入れながら、話の結論を別の方向に持っていく方が納得を得やすいと説明しています。
訂正は本人の混乱や不安を強めてしまうことがあります。
安全に関わる内容以外は、まず気持ちを受け止めることを優先します。
昔の記憶を手がかりにする
比較的最近の記憶より、若い頃や昔の記憶の方が保たれやすい傾向があります。
昔の仕事の話、子育ての話、地元の話などは、会話の糸口として使いやすい話題です。
シンプルな言葉、一つずつ
複雑な文章や、一度に複数の情報を伝えると、理解が追いつかず混乱の原因になります。
厚生労働省が公開する「認知症の人と接するときの心がまえ」でも、「短く、はっきり、具体的に」話すことをすすめており、言葉だけでなく身振りや手振りを添えるのも有効だとされています。
一つのことを伝え終えてから、次に進むようにしましょう。
表情と声のトーンを穏やかに保つ
言葉の内容が伝わりにくい場合でも、厚生労働省の同資料で指摘されているように、表情や声のトーン、スキンシップといった非言語の部分は伝わりやすいとされています。
焦りやいら立ちは、たとえ言葉に出さなくても相手に伝わってしまうことがあります。
やってしまいがちだけど避けたいこと
家族だからこそ、良かれと思ってついやってしまう行動が、本人の混乱や不安を招くこともあります。
以下の対応はできるだけ避けるよう意識してみてください。
「今日は何日か分かる?」「また忘れたの?」のように、答えを試したり間違いを責めたりする言葉は、本人の自尊心を傷つけ、不安にさせてしまいやすい対応です。
また、複数の家族が同時に話しかけること、急かすような早口での会話も同様です。
悪気なくやってしまいがちなので、意識して避けたいポイントです。

一人で抱え込まないために
認知症の方と向き合う毎日は、ご家族にとって想像以上の負担がかかります。
接し方の工夫を知っていても、日々向き合い続けるのは大変なことです。
国立長寿医療研究センターも、接し方の工夫のひとつとして「まずは自分自身を大切にすること」、がんばりすぎず抱え込みすぎないことを挙げています。
うまくいかない日が続いても決して自分を責めすぎず、地域包括支援センターやかかりつけ医、認知症の家族会といった相談先を早めに持っておくことをおすすめします。
離れて暮らしながら向き合っている方は、[遠距離介護、頻繁に帰れない罪悪感との向き合い方(※内部リンク)]の記事もあわせて参考にしてください。
また、日常的な会話の工夫やご自身をいたわる習慣については、[高齢者との会話が続かない理由|疲れないコミュニケーションのコツ(※内部リンク)]でも詳しく紹介しています。
まとめ
認知症の親との会話は、正しさより安心感を優先することが基本です。
- 否定せず、まずは思いを受け入れる
- 昔の記憶を手がかりにする
- シンプルな言葉で、一つずつ伝える
- 表情や声のトーンを穏やかに保つ
そして、一人で抱え込まず、専門機関などの相談先を持っておくことも大切な接し方の一部です。
まずはご自身の心身を守ることを最優先に、無理のないペースで向き合っていきましょう。
よくある質問
- 会話がうまくいかない日は、無理に話しかけない方がいいですか。
-
無理に会話を続ける必要はありません。表情を穏やかに保ち、ただそばにいることだけでも十分な場合があります。
- 家族だけで対応するのが難しいと感じています。
-
地域包括支援センターやかかりつけ医、認知症疾患医療センターなど、相談できる窓口はいくつもあります。早めに相談することは、ご本人にとっても家族にとっても負担を減らすことにつながります。
本記事は、認知症の方とのコミュニケーションに関する一般的な情報提供を目的としており、特定の症状への効果や治療法を保証するものではありません。ご本人の状態は一人ひとり異なります。気になる症状がある場合や対応に迷う場合は、自己判断せず、かかりつけ医、地域包括支援センター、認知症疾患医療センターなど専門機関にご相談ください。
出典・参考
※1 認知症の方と関わるとき~大切な7つのポイント~|国立長寿医療研究センター
※2 認知症の人と接するときの心がまえ|厚生労働省
※3 認知症をよく理解するための9大法則・1原則|公益社団法人認知症の人と家族の会
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